新築工務店 事例 3
       
       成功事例ではありませんが、いろいろなご苦労を紹介して行きます

        
   
実行予算20%ダウン目指し奮闘


             宮崎市T工務店

                 資本金  300万円
                 社員数  8名
                 (内訳)  社長・事務2・職人、大工5
                 年 商  3億5,000万円
                 主力工事 新築工事(木造在来)


       宮崎市T工務店は25年の社歴を持つ宮崎市内でも住宅新築工事では中堅
        の工務店だ。社長は人柄がよく、顧客や下請け業者の評判がよい。
        問題は、年々利益率が低下していたことで、2年前についに赤字に転落
        した。
        不況の影響で仕事が減っていたこともあるが、原因はそれだけではなさ
        そうだった。社長は原因を徹底的に分析することにした。
        
        まず、1番目に請負金額の平均がここ数年下がっている。これは、景気
        の低迷によって価格破壊が起こり、顧客が今までの価格では納得しなく
        なっていること。また、ハウスメーカーの地域参入によって受注競争が
        激化しており、受注を取るために値引きを余儀なくされること。
        2番目には、そういう状況にもかかわらず、下請け発注価格は以前のま
        まで、長年見直しを全くやってなかったこと。
        3番目は、住器設備機器が顧客の注文によってばらばらで、大量発注の
        メリットが出ていないこと。
        4番目は、工期が予定どうり終わらず、入金がズレ込むことも多く、結
        果的に銀行借り入れの期間が長くなり、金利負担が多いこと。
        5番目は、下請け業者に対して手形での支払いが多く、下請け業者も手
        形の金利を上乗せして請求してくること。
        このような当然の結論だった。

       社長は、1番目の顧客の発注単価が下がっていることについては、市場
        の状況がそうなら仕方ないと考え、2番目以降の原因について解決する
        道を模索した。
        まず2番目の、「下請け発注金額の見直し」を行った。いままでの下請
        け業者はすべて創業以来長年のつきあいで、発注前に見積を取ったり値
        交渉しておらず、工事が終わって請求書のまま支払ってきていた。
        また1業種1社しかおらず、発注単価が他社と比較して高いのか安いの
        かも把握していなかった。

        社長は下請け業者に工事毎の見積書を提出させ、頭からまず7%から12
        %の値引きを交渉した。今まで一度もそういうやり方をしたことがなか
        ったので下請け業者によってはかなり難航したが、最終的にはほとんど
        の業者が応じた。
        次に1業種2社、場合によっては3社、相見積をさせ、金額の安い業者
        もこれからつきあうことにした。
        次に、住器設備に関して、キッチン、洗面化粧台、ユニットバス、エア
        コン等、機種を一つに絞り、徹底的に建材店と交渉した。メーカーの担
        当者を呼び建材店の担当者を前にして交渉もした。
        その結果、住器設備の機種を絞ることによって、1台あたりの価格が下
        がった。メーカーが建材店に納入する仕切を6%下げ、建材店も4%以
        上値引きしてくれ、結果的に10%〜20%下がった。
        
        次に工期の遵守を下請けに徹底させた。予定工期より数日早めた工程表
        を、各下請けに配布し、各業者の工事の遅れが全体に影響を及ぼすと、
        口を酸っぱくして説明した。現場にも工程表を張り、職人の意識を高め
        るように努力した。
        手形での支払いを少しずつ無くしていくため、お客様からの入金を早め
        にお願いし、現金をプールするように努めた。銀行の協力も仰ぎ「手形
        での支払いを現金での支払いに変えるため」と説明し、一定の長期資金
        を思い切って借り入れした。
        業者の支払いは、今まで末締めの翌月末払いだったのを、20日締めの翌
        々末払いに変更した。手形での支払いを少なくし現金での支払いを次第
        に増やした。
        手形を1年以内に無くしていく計画で進めた。現金の比率を増やすとい
        うことで、業者が手形を割り引く金利を請求から引いて貰うように交渉
        した。

        このように、打てる手はほとんど打った。
         その結果、半年後には実行金額を今までより20%も下げることが出来
         たのである。
         言葉に出していえば簡単だが、下請けとかなり「すったもんだ」があ
         ったそうだ。支払い期日を変更したときなどは、「T工務店は危ない」
         という噂さえ流れた。

         社長は言う、「あのまま赤字の経営を続けていたら、結局会社は倒産し、
         下請けに多大の迷惑をかけていたでしょう。ですから、いまはみんな分
         かってくれてますよ。」
         受注を見直す事も大切だが、発注を見直す事もそれ以上大切だ。


     試行錯誤で頑張ってます4 へ進む
    
 試行錯誤で頑張ってます2 へ戻る
    
 最初のページへ