新築工務店 事例 4
       
       成功事例ではありませんが、いろいろなご苦労を紹介して行きます

        
    
1ヶ月で素人社員をプロに


             奈良市E商事不動産部

                 資本金  1,500万円
                 社員数  10名
                 (内訳)  社長・営業5・事務2・監督2
                 年 商  3億3,000万円
                 主力工事 新築建売住宅


       奈良市E商事不動産部は、中国からの海産物の輸入を扱うE商事の不動
        産部門として平成1年に創設された。
        当初はバブルの波に乗り不動産の売買でかなりの収益を上げたが、バブ
        ルの崩壊、その後の景気の低迷によって借入金の金利負担で経営が危機
        に陥った。
        不動産の売買を主流にしていた販売方法を見直し、数年前、マンション
        のリフォーム工事に乗り出した。
        
        建設会社から現場監督1名と営業責任者1名を引き抜き、今まで不動産
        の売買をやっていた社員を増改築の営業部に配置換えした。
        建築に関してはズブの素人達である。短期間にプロに養成するためには
        どうすればいいか。お客様の信頼を勝ち得るにはどうすればいいか。
        素人営業社員の特訓が始まった。
        今でこそ社員の技術力も上がり、2級建築士や施工管理技士免許を擁す
        る社員も多くなったが、建築部門を作った当時は惨憺たる状況だった。

        住宅設備メーカーのショールームで勉強会をし、住宅展示場の見学、増
        改築現場での研修、銀行の貸付担当者を招いての住宅金融公庫リフォー
        ムローンの講義、カタログ関係の収集、現場施工の実習等、短期間に知
        識が詰め込まれた。覚えることのあまりの多さに落伍者が出始めた。
        頭がついて行けないのだ。
        そこで、方針を変えることにした。

       5名いる営業社員をそれぞれ専門を決め、徹底的に勉強をさせたのだ。
        工事は、工事内容がパターン化(平準化)しているマンションリフォー
        ムに限定した。
        そして、住宅設備のメーカーTOTOのレガセスというキッチンの専門、ダ
        イケンのフロアー材とサンゲツのクロスの専門、住宅金融公庫リフォー
        ムローンの専門、ユニットバスの専門、リフォームプラン作成(間取り)
        専門。という具合に一つの項目について徹底的に勉強させた。
        1ヶ月のうちにそれぞれの分野で知識はかなり増大しそれが自信になっ
        た。

        お客様の家に打ち合わせに訪問するときは、あらかじめどういう改装工
        事なのかを聞いておき、専門の担当者が訪問する。たとえば、キッチン
        のリフォーム工事を住宅金融公庫を利用してやりたいお客様だったら、
        その専門担当者が2人で訪問するのだ。自分の得意分野の話になればそ
        の分野については詳しくお客様に説明出来るようになった。専門担当者
        がお客様と話しているその話を、もう一方の社員が聞きながらまた知識
        を吸収するという具合だ。キッチンやユニットバスや建材などは、これ
        これの材料を使ってくれなどと指定するお客さんは少ない。だから、種
        類を一つに絞ってそれを勧めるのだ。たいていは、営業社員の勧めるも
        のに決まっていくようだ。
 
       素人のお客様にはそれで通用するかもしれないが、いざ工事となると、
        状況は違ってくる。下請け工事店のプロを相手にしないといけないから
        だ。社長は、下請けを1社1社訪問し、社員の教育のために協力して欲
        しいと頭を下げた。社員にも、元受風を吹かず謙虚に教えを乞うように
        指示した。
        何とも涙ぐましい努力だろう。それにプロや同業者から見ればいかに危
        なっかしかっただろうか。

        こうして、1ヶ月あまりの間に素人集団はプロ集団へと変身をしつつあ
        る。もちろんオールマイティーではない。すべての事が分かっている訳
        ではないが、お客様よりほんの少し知識があれば十分アドバイス出来る
        という考え方だ。
        こと、リフォーム営業に関しては、一般的に広く浅くの知識が要求され
        るが、その知識吸収のきっかけはやはり自信だろう。その、素人営業マ
        ンの自信を植え付けるためにも、各専門分野の深い知識の習得は意欲に
        繋がっているようだ。

       マンションの増改築に参入して今年で5年。今では自社ブランドの建売
        住宅を建設販売するまでになった。当時の社員は全員残っている。
        社員は皆ベテランになり、一人でプランの打ち合わせから、仕様の決定、
        見積、現場監督、ローンの申し込みや登記の手続きもやってのける。
        インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネージャー、キ
        ッチンスペシャリストの資格はもちろん、2級建築士や2級施工管理技
        士を取得した社員もいた。
        最初からすべてを教えるより、覚えはじめの時は集中して一つの分野を
        勉強させることで自信が付き、結果的に短期間で全体をマスター出来た
        のである。

        ある営業社員が面白いことを言っていた。
        「最近ゴルフを始めたんですが、やっぱり同じですね。最初はウッドも
        アイアンも一通り練習したのですがなかなか上達しないので、アイアン
        の5番だけを徹底的に練習したら自信がつきました。それから他のクラ
        ブを練習するようにしたら、他の人より早く上達しましたよ。」
        案外、すべてのことに共通するのかもしれない。


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