増改築工務店 成功事例 10
     

        
   
相見積を有利に展開する


             熊本市R建設

                 資本金  350万円
                 社員数  6名
                 (内訳)  社長・営業2・事務1・監督2
                 年 商  2億4,000万円
                 粗利益  8,000万円(推定)
                 主力工事 木造在来の増改築工事


        物事をうまくやっている人の話を聞くと、簡単なことを一生懸命やっ
         ているから成功しているということが案外多いものだ。コツなんてち
         ょっとした事だ。そのちょっとしたことで業績を上げている会社を紹
         介しよう。
         熊本市で年商2億4,000万円を挙げているR建設だ。
         社員は社長と現場監督一人以外は女性。平成9年に女性の現場監督を
         採用したので、社員6名の内、4名が女性と言うことになる。
         2名の営業社員は近くに住む主婦だ。年齢は36歳と45歳。
         この2人で年商の70%を稼ぎ出すから驚きだ。見た目はふつうの女性
         だ。この女性達は2人とも生命保険業界からの転身組だ。建築知識は
         お世辞にもあるとはいえないこの女性達が月間 1,400万円に上る契約
         を挙げているのは相見積に非常に強い事だろう。
         
        2人が入社したとき、社長は「2人の知り合いや昔の生命保険のお客
         様からの注文が年に1軒でも取れればいい」位の気持ちしかなかった
         という。要するにあまり期待していなかったのだ。だから特に教育ら
         しい教育はしていない。また忙しい社長は教育する暇もなかったとい
         う。パートだからという気楽さもあり、とにかく2人に任せたのだ。
         2人はぼつぼつ知り合いを回り始め、入社して3ヶ月たった頃から見
         積の依頼を取ってくるようになった。会社に帰ってきて社長に見積を
         お願いするのだが、そのお願いの仕方が変わっている。
         「この間取りのここと、ここと、ここと、ここを、こういう風に改装
         して、300万円で見積もりして下さい。」と言うのだ。社長は驚いた。

         見積というのは、お客様の希望の工事でいくらかかるかを見積もるの
         が見積であって、最初から金額を指定して見積もれとはむちゃくちゃ
         な話だ。
         でも彼女たちは平然としている。
         「社長、とにかく300万円しか予算がないんです。だから、300万円で
         無理なら、ここをこう変更したら 300万円になるという見積書を作っ
         て下さい。」
         社長は、2人がお客様から聞いて来た工事内容を当たり前に見積もり
         したら500万円程度掛かることを説明してやり、言われるとうり300万
         円での工事内容を提案して、300万円の見積書を作ってやった。
         結果的には、そのお客様は、R建設以外に3社に相見積を依頼してお
         り、R建設以外はすべて当然の事ながら 500万円前後の見積だったと
         いう。
         しかし、 300万円しか予算がないことを彼女達はお客様からうまく聞
         き出してきており、交渉は有利に進んだ。
         最終的にR建設で350万円で決まったという。

         彼女たちは言う。「300万円しか予算がないのに500万円の見積を持っ
         て行っても契約が取れるわけないでしょう。もし私だったら予算に合
         わせて最高の提案をしてくれるくれるところへ頼みますよ。」
         なるほど、主婦感覚だ。

        一般的に建築業者はお客様から見積もり依頼を受けた場合、お客様と
         打ち合わせをした工事内容で見積をする。それはプロとしての常識だ。
         でも彼女たちは言う。
         「お客様はシロウトで、一体全体いくら掛かるか見当もつかないから、
         予算は最初はっきり言わないんですよ。だってあそこもこうして、こ
         こもこうしてって言いたい放題希望を言って、ホントは予算がその半
         分くらいしかなかったら恥ずかしいじゃないですか。そして上がって
         きた見積を見て金額にみんなびっくりして急に冷めちゃうんです。自
         分もそうでしたから。」
         女性達は、最初お客様から工事の予算を聞き出すのが自分たちの「腕」
         だと言って笑った。
         予算を聞いたら、その予算の1割から2割アップくらいでほとんど決
         まるという。今まで、お客様から言われた通りの希望条件をすべて見
         積もりし提出していた社長は、目から鱗が落ちる思いだったという。
         女性特有の図々しさでお客様から本当の予算を聞き出せるのかも知れ
         ないが、参考になる話ではなかろうか。

        2人の営業社員はもっと図々しいこともやっている。
         お客様のところに訪問して、他の業者の見積書を見つけたら、ちゃっ
         かり見せてもらっているのだ。場合によってはその見積書を借りてき
         ている。そして社長に「他の会社が出した見積書を借りてきましたか
         ら、この金額より50万円安く見積もりして下さい。それで取って来ま
         すから」と言うそうだ。
         これでは、R建設と相見積になった工務店は、かたなしであろう。
         恐るべきは中年女性だ。


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