増改築工務店 成功事例 2
     

        
  
得意工事をアピールし下請けから脱皮


             北九州市小倉北区Sホーム

                 資本金  300万円
                 社員数  5名
                 (内訳)  社長・事務1・職人3
                 年 商  2億4,000万円
                 粗利益  7,500万円(推定)
                 主力工事 屋根瓦工事


        北九州市小倉北区Sホームは2代目社長である。先代は個人の瓦屋だ
        った。
        先代の引退によって2代目が引き継ぎ会社組織にした。引き継いでしば
        らくの間は先代のやり方をそのまま踏襲して、主に大手住宅メーカーの
        下請け工事を行っていたが、メーカーからかなりの値引きを要求され、
        利益率が悪く、また時期的な受注の波が原因して一時経営危機に陥った。
        「廃業するか思い切って今までのやり方を変えて勝負に出るか、三日三
        晩考えましたよ。」(社長談)

        考えあぐねた末の結論は「もう一度最初からやり直す」ことだった。
        瓦工事をやめて、別の工事を専門にする気はなかった。そこで社長が考
        えたのが、下請けをやめて個人の顧客を対象にすることだった。
        これには父(先代)の反対があった。
        「工務店との今までの長いつきあいがあるので、大手メーカーはともか
        く、地元工務店の下請けだけは継続しておいて欲しい」と言う父の反対
        を押し切り、下請けをすべてやめた。

        社名を変更しSホームとした。
        今までの下請けのイメージを払拭したかったからだ。
        メーカーの下請けをやめてから仕事は途絶え、ますます状況は悪くなっ
        た。職人が遊ぶ毎日が続く。
        社長は職人に営業をさせることにした。なにぶん今まで営業などやった
        ことのなかった職人たちである。戸惑いはかなりのものだった。
        社長は今をがんばれば将来の展望がきっと開けると職人たちを激励し、
        全員で力を合わせようと説得した。
        そして次のような小さなチラシを作った。

        (チラシの文章は原文のまま)

         

        ○○町の皆様

        私たちは○○町の瓦屋でSホームと申します。
        今まで大手住宅メーカーの下請け専門にやってきましたが、今後は個人
        の皆様のお家の屋根工事を請けさせていただくことになりました。
   
        例えば屋根工事の金額は、通常屋根坪当たり○○○○円位ですが、私た
        ちに注文いただくと、坪当たり○○○○円位で出来ます。(和型釉薬瓦)
        通常の価格の2割から3割もお得です。
        屋根の葺き替えのご計画のお客様、一度お見積もりをさせて頂けません
        でしょうか。お見積もりはもちろん無料です

        今後は、地域のみなさまの屋根工事屋として一生懸命頑張るつもりです。
        どうぞよろしくお願いいたします。

                           Sホーム 代表 ○川○雄

         

        このチラシを新聞に5,000枚折り込んだ。元請けメーカーとの本当の
        決別だった。
        チラシを折り込んで2日後、反応があった。それは、「今、新築をある
        メーカーに頼んでいるが、その見積を見ると屋根工事がお宅のよりかな
        り高いので、屋根工事だけでも切り離して頼みたい。チラシに載ってい
        た金でやってもらえるか」というものだった。
        社長は「住宅メーカーの屋根工事の見積と、自分たちのような瓦専門業
        者の見積とでは値段に開きがあるのは当然で、アフターサービスの問題
        もあるので、お請けできません。」と説明し、丁寧に断った。
        仕事をもらっていた元請けメーカーに対するささやかな仁義だった。

        それから2週間後、同じ地区内に2度目のチラシを折り込んだ。
        今度は、チラシに瓦の種類と金額を細かく入れ、また、倉庫に眠ってい
        た在庫の瓦を特別価格で提供することにした。
        今回はすぐに反応があった。
        早速、屋根全面葺き替えの見積依頼があり、在庫商品での格安工事だっ
        たが注文が取れたのだ。
        工事中、下記のような看板を家の前に立てさせてもらい、周囲100件に
        挨拶に回った。
        チラシも再度手配りした。屋根工事専門店ということと、この町の地元
        の瓦屋だということを繰り返し繰り返し宣伝した。

         

                 仲野邸瓦葺き替え工事

                   地元の瓦屋です
                 瓦一枚から葺き替えます
                  瓦の点検は無料です

               北九州市小倉北区○○町1丁目14-45

                 瓦工事専門 Sホーム

        

        6ヶ月たった頃から、電話の問い合わせが少しづつ増え始めた。
        一般リフォーム工事屋ならともかく、この会社のように瓦専門でありな
        がら、積極的に地域密着をし、繰り返し繰り返し宣伝活動をしている屋
        根工事店は、地元に他に一軒もなかった。
        初めて問い合わせをしてきた新築工事のお客様は、結局、この屋根屋を
        使ってくれと住宅メーカーに注文を付け、メーカーの方からお願いしま
        すと頼んできたという。
        6ヶ月前には、メーカーの無理な値引き要求に死ぬほど苦しんで、やむ
        なく下請けを止めたというのに、止めた途端メーカーの方から仕事を依
        頼に来るとは。
        社長は、個人のお客様からの支持が、これほどありがたいとは思わなか
        ったという。

        
結局工事を依頼に来たメーカーは、通常の下請け単価よりかなり高い
        金額で発注をしてきた。しかし、下請けからの独立後、メーカーから請
        けたのは後にも先にもその一軒だけだという。

        
職人たちは仕事が少しづつ取れ始めたので、自信をつけ、積極的に営業
        に回るようになった。
        受注した仕事は、材料支給で手間請け瓦職人に出し、当初からいた職人
        たちは1年経った今でも営業をしている。
        ある40代の職人の作ったチラシを紹介しよう。

        (チラシの文章は原文のまま)

         

        ○○町の皆様

        わたしはSホームの営業で、田中敬吾と申します。
        わたしも家内もこの町で生まれ、この町で育ち、私は瓦職人になりまし
        た。これから先もこの町でずっと暮らして行きます。

        お宅の屋根は傷んでいませんか。わたしが拝見いたします。
        瓦がずれたり、割れたりしていると、家がはやく傷みます。
        気軽に声をかけてください。いつでも飛んで参ります

                              Sホーム 田中敬吾

         

        何という朴訥なチラシだろうか。
        チラシには、誇大広告の文言も、やたら価格を値引きする誘引的な文章
        など、どこにも出てこない。
        ただ、自分は地元で生まれてこれからも地元で暮らすから、自分が責任
        を持って瓦の面倒を見ると、上手とはいえない手書きで書かれているだ
        けである。
        ある広告代理店がこのチラシを見て、最大のセールスだといったという。
        事実、このような素朴な手作りのチラシに感動する人は多い。
        Sホームには、お金の掛かったカラーのチラシやパンフレットは必要な
        いということだろう。

        一般の増改築工事店と違い、Sホームは瓦工事専門である。
        「瓦工事以外の増改築工事は請けるのか」と社長に聞いたところ、「増
        改築工事のノウハウがないので、大工と組んで増改築工事は受注しては
        いるが、ほとんどサービスのようなものです。いずれは近い将来現場監
        督と常用大工を雇って、一般の増改築にも進出したい。その場合も、瓦
        の専門工事店としての看板はあげておきたい。」とのことであった。

        普通、お客様が増改築工事をされる場合などは、瓦工事は建設工事の一部
        として、元請けサイドで発注することが多いが、Sホームの場合はお客様
        から増改築工事から瓦工事だけを切り離して、直接頼まれることが多いと
        いう。
        それだけお客様から信頼されているのだ。


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